「精進料理」
お釈迦様が仏教徒が守るべき戒律として一番に上げていたのが、生き物を殺さない“不殺生戒”で、その教えから「生ぐさものを食べてはならない」という精進料理に結びついています。
もともと日本では、仏道だけでなく一般の人であっても葬儀や法要のあと、お盆やお彼岸の中日には生ぐさものを避け動物性食品を食べない習慣がありました。 他にも親族の命日には動物性食品を食べず、両親など近親者の命日は「月命日」とし、毎月日を決めて同じ日を精進日としていたため、誰もが月に1~2日は動物性を一切口にしない、現代でいうところの「フレキシタリアン」であったと言えます。
仏教徒の煩悩から生まれたベジタリアン料理?「精進料理」 元来、和食では素材そのものを生かし「料理しないことを料理の理想とし、口の中で味の調合をする」ものであったが、精進料理では植物性材料に様々な技巧やテクニックを駆使して肉や魚に近い味わいを作り出すために、時間と手間暇をかけて食材を徹底的に調理・味付けされています。 今のベジタリアン・ヴィーガン料理のベースとなる”もどき料理”は、料理技術を誇るのと同時に、僧侶たちの断ち切れない肉食願望を満たすために、豆腐・湯葉・麩などを使い外観や食感、味までもを本物の肉や魚などの動物食に近づける工夫をしたものだと言われています。
はじめは寺の内部だけで発展した精進料理が、その高度な料理技術は一般にも広がっていきました。 しかしながらその精進料理の影響はとても大きく、今の日本料理の繊細で美しく、季節感の演出のルーツとなっています。
精進料理のきまりごと ・肉、魚、甲殻類をはじめとし、乳製品や卵、ゼラチンを含む動物性たんぱく質は使わない
・出汁も鰹節や煮干しやあごといった魚介の出汁は使えない (昆布、干し椎茸、大豆、かんぴょうや切り干し大根などの乾物を使い旨味を出す)
・植物性の中でも五葷(ごくん)と言われるにおいの強い食材(にんにく、ねぎ、にら、らっきょう、あさつき等)も禁忌食材とされる。(“五葷抜き”と言われる) ※仏教では三厭五葷(さんえんごくん)といって、三厭(肉、鳥、魚類)と五葷(ごくん)を食べないベジタリアンのことをオリエンタルベジタリアンという (臭いの強い五葷は、陰陽五行で陰性の気が強く、五臓(臓器)に負担をかけてしまうだけでなく、気を乱し精神や感情にも影響を与えると言われます。いわば一般的に精がつくと言われるものであるため若い修行僧にとっては煩悩が増えることから、また、口が臭くなり説法に集中できなくなるため修行の妨げになると避けられたとも言われています)
食材に敬意を! 精進料理とは、単に動物性食材を使わないベジタリアン料理とは違い、仏教に基づく精神性の部分も重んじるものです。 命を大切に、食材に敬意を払うこと。野菜や穀物など植物であってもその尊い生命をいただくこと、それを育ててくれた生産者への感謝の気持ちを持ち、食材を大切に一切無駄にせず心を込めて調理し、いただきたいものですね。
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